アニメ最高!声優さん万歳!
ここは、そんなヲタ的な管理人が、それらしきことを叫んでいるブログです。
退屈な時にどうぞ(^^)v

※初めて来た方は最初に、「welcome」を見ることをおすすめします…
<< December 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| | - | - | - |
1.「ねぇ」


臨也とモブの女の子






「ねぇ」


いつも通り薄暗い路地を歩いていると、誰かに声をかけられた。
私はぴたりと歩みを止める。

「こんな夜に女の子がこんな道を出歩くのは、危険じゃないかなあ」

いくら、今池袋の治安がいいって言ってもさ。

私は、声の発信源を探るため道を見回す。しかし、辺りは闇が広がるばかりだ。
「あー、こっちこっち」
狭い路地に柔らかく足音が響く。さっと振り向くと、全身を黒く染め上げた若い男が立っていた。


「折原」

私は男の名字だけを口にした。男は何も言わない。ただ、面白そうに唇の端を持ち上げただけだ。

全身黒ずくめにした男は、闇をそのまま具現化したようにも見える。放っておいたら闇にそのまま溶けてしまいそうだ。
ただ、その目だけが気味が悪いくらい赤い。

「君も飽きないねえ。なんでそう、毎晩毎晩このあたりを彷徨いてるのさ。しかもこの時間に。いつも忠告してるはずだよ。危ないって」
「私がいつどこを歩こうが、私の勝手だ」
「つれないな」
くっ、と微かに声を漏らし、男は笑った。
そもそも、「危ない」の代名詞とも言える男に言われたところで説得力などない。

「でも夜中に路地だよ?なにか用があると考えた方が自然だろ?」
「……お前こそ、一体こんな時間にこんなところで何をしてるんだ」
「……俺がいつどこで何をしようが俺の勝手じゃないの?」
「お前にその正論が適合するか。ここは池袋だぞ」

池袋といえば、男が高校時代からいがみ合っている宿敵がいるはずだ。
噂では、現在その宿敵はテレクラの取り立て屋として働いていると聞く。夜中とて、いつ出勤しているとも限らないはずだ。

「君もそういう噂とか、聞くんだねえ」
馬鹿にしてるのか。
「いやいや、単純に意外だっただけさ。君は俺のことに関してはとことん興味がないんだろうと思っていたからね」
にっこりと笑いながら、男は言った。
相変わらず、顔だけは良い奴だ。

しかし、次の瞬間笑みの種類が少しだけかわる。苦々しいとでもいうのだろうか。そんな表情をしたまま、男は珍しくため息を吐いた。
「まあ、確かにシズちゃんに見つかると厄介だ。だから出来る限りは奴に出くわさないようにしたいものだね」
シズちゃん。男は自らの宿敵をそう呼ぶ。
彼らには何やら因縁があるらしい。
昔からいがみ合っているわりには疎遠になることはないのだというのだから、不思議な話だ。

「というか、池袋であの男を知らない奴はいないだろ」
それとお前も。
口にはしなかったが、多分その辺は本人が一番自覚していることだろう。

「なんにせよ、君からそんな話を出してきたのが意外でね」
「あまり進んで知りたかったわけではないがな」
「ひどいなあ」
くすくすと男は笑う。
私は男に、淡々と言い返した。それは、まるで何かの宣言のように。


「そりゃあな。
私はお前が嫌いだから」


男の赤い目が、すっと細まった。
「へぇ」
呟くと、また笑う。
私は、この男を見ていると笑顔にも色々種類があることがわかるな、などとどうでもいいことを考えた。

男は自らの下唇をなめた。私を見る目は鋭く、捕食者を思い起こさせる。
油断をしたら、とって食うとでもいうような、危険を孕んだ目だ。
その目のまま、言った。


「俺は君が好きだよ」


その目や雰囲気を裏切って、柔らかく、優しげな声が私の耳から入り込む。
男の声が私の脳髄に響く。
私はこの瞬間が、吐き気がするほど嫌いだった。

この気持ちを言葉に表すなら――気持ち悪い、だ。



誰が言っただろうか。
「折原臨也は、言葉から人を食う化物だ」と。



私はなんとか声を出した。
「お前が好きなのは全人類、だろ」
「そうさ。俺は人間そのものが好きだからね。家族も友人も善人も悪人も女も男も、誰も分け隔てなく愛している」
「よく恥ずかしげもなく言えたもんだな」
「事実だからね。……ああ、シズちゃんだけは論外だけどさ。あんな化物は人間とは呼ばない」
化物は化物だから。

そう吐き捨てる化物は、しかし宿敵をこき下ろしたときが最も人間らしく思えた。
ここまでは頑なだったはずの感情が剥き出しなのだ。

「そうか……」
私は息をついた。
「どうでもいいな。私には関係ない」

この言葉を聞くと、男は即座に鋭かった目を元に戻した。
にやりと笑うと、言う。

「そうだね。……君には、関係がない」

私は、堪らなくなって再び男に背を向けた。
男の言葉は、「逃がさない」とでもいうように追ってくる。

「俺と君とは全く関係のない他人さ」

わかっている。わかっているのだ。



どれだけ私が彼に「興味がない」風に装っても。

どれだけ私が意図的に彼を名字で呼んだとしても。

どれだけ私が彼の現れる時間帯に路地を彷徨いても。


どれだけ私が彼に嫌いだと宣言しても。




彼が全人類を愛し続ける限りは私自身に目を向けてくれることは決してない。




それでも私は。

あの、全てを見透かしたような赤い目を持つ男に。
会いたいと思いながら薄暗い路地を歩く。



今日もあの化物の言葉を聞くために。


「ねぇ」



ほら来た。



end.
| 23:36 | バトンお題 | comments(0) | trackbacks(0) |